タンチョウやハクチョウのような長腕の大型の鳥では、羽ばたきの周期が比較的大きいので、 羽ばたきの各瞬間に定常・2次元流れに近い状態にあると仮定して、翼に揚力や推力が発生する メカニズムを知ることができます。 進行方向(水平方向)に対して傾斜した(迎角のある)翼を打ち 下ろすとき、翼にあたる流れの速度は、進行速度と翼を打ち下ろす速度の合成速度の逆ベクトルで、 前下方より後上方へ斜めに向かい、翼にはクッタ-ジューコフスキーの定理(話題2)に従った力が作用します。 この力は後下方より前上方へ向かうので、この力 から揚力と推力の両方が得られます。 一方、翼を引き上げるときは、進行速度と翼を引き上げる 速度との合成速度の逆ベクトルは前上方より後下方へ向かうので、動きの小さい翼の基部では 弱められた揚力と弱い負の推力が作用し、動きの大きい翼の先端部では弱い負の揚力と弱められた 推力が作用することになります。 そこで、翼の迎角や引き上げ速度を巧く調節すれば、引き上げの とき翼に作用する負の揚力や負の推力を消すこともできるでしょう。 いずれにせよ、翼を上下に 動かす羽ばたきによって、平均して揚力と推力が得られます。 揚力が重力に等しく、推力が抗力に 等しくなれば、飛翔を続けることができます。 動きの小さい次列風切は大きな揚力を得るために 大きな迎角にしているので、動きの大きな初列風切は失速を防ぐため次列風切羽よりやや前傾した 状態になるでしょう。 また、翼を打ち下ろすとき、前縁に近い初列風切羽は各羽が分離し、羽先が 上方に反り、羽の間に隙間ができた状態になっていて、誘導抵抗を節減し、姿勢を安定化させ、 羽ばたきで起こる失速を防ぐと考えられます。 羽ばたき飛翔に関係した話題が話題4や話題10で取り上げられ ています。
制作:1997年11月、縮尺1/2(全長=140cm、翼開長=240cm)
同上作品を別方向から見る
アクリル絵の具はそれぞれ特有の反射・透過・吸収の性質をもっています。 例えば、
白色の絵の具でも、チタニウムホワイトは不透明ですが、ジンクホワイトは半透明です。
黒色の羽の上に白色の羽が重なる多重層構造は、不透明な黒色絵の具の上に半透明な白色
絵の具を塗ることによって表現できます。
この作品は、初孫ができることを祝って、孫の誕生日に合わせて完成させたものです。
茜色の台座はタンチョウが飛び立つ夜明けをイメージしています。 思い出になる作品です。