② ノスリのハンギング

 ハンギング(羽ばたかずに空中に静止すること)は、傾斜地にそって登る気流中を気流の速度 と逆向きの速度で滑空すれば実現します。 山の斜面を駆け下りて離陸・浮上するハング・グライダー もこれに似ています。 傾斜が緩やかで、気流の速度が大きくないとき、重力に対抗する揚力を作り 出すために、ノスリはいろいろな工夫をしています。 尾を広げて下に傾け、フラップ効果を作り 出しています。 モーメントのバランスをとるために、翼はやや前方へ伸ばし、迎角や反りを最大に します。 翼を広げたとき張り出す腕の靭帯は翼の反りを増大させます。 分離して隙間のできた 初列風切羽で翼列の効果(話題8)を作り出し、また、少し持ち 上げた小翼羽の前縁スラット効果や毛羽立った前縁羽による弱い乱れの導入(話題7)によって、境界層の剥離(失速)を防いでいると考えられます。 また、分離して 上に反った翼端に近い初列風切羽は、低速飛行で大きくなる誘導抵抗を節減する効果があると 考えられています。 ノスリの翼や尾の羽根の配列、大きさや形状は、低速飛行に対してこれらの 効果を作り出すために巧く出来ていると思われます。

制作:2002年3月、縮尺:1/2(全長=52cm、翼開長=126cm)

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 このような低速滑空飛行の特徴は、暗夜に待ち伏せ猟をするフクロウ が止まり木から地上の獲物まで低速滑空消音飛行で近づいて行く場合にもみられます。 低速滑空消音 飛行については、補足の話題7でも触れています。

 翼と胴を次列風切の中間で接合する方法が用いられています。 これは、木材を節約する だけでなく、翼と胴を曲面で接続し、雨覆や脇羽を正しく表現することができ、また、次列風切 の断面翼型を正しく形作ることができるといったメリットがあります。









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