アホウドリは海上を吹く風の境界層を利用してエネルギーを獲得し、帆翔することで知られて います。 このような帆翔はダイナミックソアリングとよばれています。 これに適したずんぐりした 流線形の体と、先の尖った細長い翼(アスペクト比の大きな翼)が特徴です。 境界層の上層部で 風に乗って運動エネルギーを獲得した後、位置エネルギーを利用して、風下に向かって海面近く まで降下・加速して来たアホウドリは、境界層の下層部(風速の下がった海面近く)を必要な方向に ある距離飛行した後、進行方向を風上に変え、残された運動エネルギーを利用して(鳥の速度が ゼロになってからは風から運動エネルギーを補給して)翼にあたる流速が臨界速度に達する高さ まで上昇します。 そこで、再び進行方向を反転し、同様な帆翔を繰り返します。 エネルギー保存 の法則から、出発点における鳥の運動エネルギー(境界層上縁の風速に対応する)と位置エネル ギーの和から、終着点(話を簡単にするため、鳥の運動エネルギーがゼロになる点とする)における 位置エネルギーを差し引いたものは、出発点と終着点の間で抗力によって失われたエネルギーに 等しくなるでしょう。 アホウドリはこのような関係を体得していて、抗力による損失エネルギーを最小 に抑えながら、再出発点の高さや海面近くの水平飛行距離を変えているのではないでしょうか。 両翼を下方へ湾曲させている姿を見かけることが多いのは、操舵性をよくするためでしょうか (話題5)、それともアスペクト比の大きな翼にかかる力の負担 や構造強度上有利なのでしょうか。
制作:1998年12月、縮尺:1/2(全長=91cm、翼開長=207cm)
進行方向を変えるときの姿は話題6で述べられています。 アホウドリは、首を旋回する方向に曲げ、また旋回する側の足を横に伸ばして、重心を旋回する側へ 偏らせ、さらに/または 旋回する側の翼を少し下に傾ける動作をして、旋回方向に傾いた姿勢を作り 出すでしょう。 この姿勢は翼に旋回方向に向かう力を発生させ、アホウドリを旋回する側へシフトさせる でしょう。 このとき、水掻きを一杯に広げた足には、尾とともに、旋回の向きとは逆向きの力が発生し、 旋回方向のモーメントを作り出すでしょう。 旋回する側と反対側の足を内側にねじれば、さらに大きな 旋回方向のモーメントが得られるでしょう。 このような足の動作は、両足の非対称な配置から生じる ねじれモーメントを消すためにも有効であると考えられます。
制作:2004年3月、縮尺:1/2
彩色をぼかす方法として、水で濡らした表面上の絵の具の拡散速度を制御する方法が 考えられます。 絵の具に微量の界面活性剤を混ぜると、アクリルが固まるまでに絵の具が拡散する 距離を伸ばすことができます。 逆に、羽斑のような、彩色がにじんでは困る場合には、絵の具に 増粘度剤を混ぜ、アクリルが固まるまで絵の具の拡散を抑えることもできます。 (顔料の種類によって 絵の具の拡散速度が大きく異なることに注意!) ここでは前縁羽の色付けにそのような方法を試みて います。 アクリル絵の具の彩色は混相流の興味ある問題です。