話題6. 鳥の操舵方法、方向を変えているときの姿

 課題3で触れたように、飛翔中の鳥が方向を変えるためには、ある方向の運動量をもつ気流を 作り出し、その反作用力が重心に対して旋回方向のモーメントを与えるようにすればよろしい。  それには様々な方法が考えられます。

 図13


 例えば、鳥が両翼を水平に広げて滑空しているとき(図13a)、左(右)側の翼だけを下に傾けたとすれば (図13b)、両翼に作用する力の垂直成分と重力からなる偶力は、鳥が左(右)に傾くように作用するでしょう。  このとき翼に作用する力の水平成分は鳥を横へ移動させる力を作り出しますが、その作用点が重心の上近く にあるため、旋回に必要なモーメントは得られないように思われます。 しかし、鳥が横へ移動すれば、 左(右)に傾いた尾翼には旋回方向の運動量を伴う気流が発生し、その反力は旋回方向のモーメント を与えるでしょう。 鳥が左(右)に傾いた状態で尾翼を上に反らすか、さらにそれを左(右)にひねる ならば、もっと切れのよい旋回ができるでしょう。 切れのよい旋回とは、旋回の角加速度が大きい ことを意味し、剛体の回転運動の法則から、モーメント/慣性能率が大きいときに得られます。  また、最初に下に傾けた片側の翼を少し前に出すならば、発生する横方向の力は重心の前方へ ずれて、翼を傾けた側へ鳥を旋回させるでしょう。

 鳥が旋回方向の足を横に伸ばすか、頭を旋回方向側へ偏らせても、重心が移動して、鳥は 旋回方向側に傾き、上と同じような方法で、広げた尾翼やぼく足を用いて方向を変えることができる でしょう。 重心を偏らせて方向を変える方法はハング・グライダ-の操舵方法にもなっています。

 羽ばたき飛行している鳥では、左右の翼の推力や抗力に差をつけることによって、旋回に必要な モーメントを作り出すことができるでしょう。 例えば、手漕ぎボートで方向を変えるときのように、旋回方向 と反対側の翼を大きく羽ばたくか、または/および その翼を少しひねって迎角を大きくすれば、旋回に 必要なモーメントが得られるでしょう。 また、ツバメに見られるように、尾翼を上に反らし、左または右に ひねることによっても、切れのよい方向変換ができるでしょう。

 カワセミやハヤブサに見られるように、獲物を狙って急降下している鳥では、畳んで下に傾けた初列風切羽の 左右対称性を変えることによって進行方向の修正ができるでしょう。 

 それぞれの鳥が、それぞれの飛翔状態において、どのような方法で進行方向を 変えているかを観察し、その力学を考えてみることも興味あることです。 また、垂直面に対して左右非対象な 飛翔姿の鳥を制作するときは、鳥に作用するであろう力やモーメントを予めチェックしておくことも必要です。  さもなければ、きりもみ墜落や衝突寸前の状態を表しているといった失敗作にもなりかねません。

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