② バウンディング飛行するアトリの大群

 アトリは、冬鳥として、全国の山里で見られるスズメより少し大きい鳥です(アトリ L=16cm、W=23cm; スズメ L=14cm、W=21cm)。 アトリの群れは数千から 数万になることが観測されています。 アトリの群れ飛行では、それぞれがバウンディング飛行をしている場面が多く見られます。 バウンディング飛行の波長や 間歇羽ばたき数は 同程度の大きさのスズメのそれらに近いのではないかと思われます。 また、スナップ写真を見るとき、 バウンディング飛行の上下動は小さく、翼の畳み-広げ方や間歇羽ばたきの動作はムクドリのそれらに似ています。  バウンディング飛行の周期は不規則で、連続羽ばたき飛行の中にバウンディング飛行を適時取り入れているような感じがします。

 バウンディング飛行は、翼を畳むことで、飛行に必要な占有空間が狭まり、より密集した群れ飛行ができるでしょう。 (外敵の攻撃を避けるために群れの中に 潜り込むときにも有効でしょう。) バウンディング飛行は、間歇羽ばたきによる下降気流を作り出さず、また、その影響を軽減するためにも有効です。 バウンディング飛行は 慣性を最大限に利用した省力・省エネルギー飛行として知られています。 間歇羽ばたきが地面や水面の近くで行われるならば、さらに省力・省エネルギーの効果が得られる でしょう。

2013年4月制作、実寸、1号

 大群の鳥の飛行は、“巨大な生き物(巨大な運動量の物体)が動いている”、“大地が動いている(雪崩や土石流のように)、 “荒波(高波)が押し寄せる”などと表現されています。 数による威嚇は、このような様々な飛行のパターン(外観)によっても与えられます。 “それぞれの鳥のどのような 自律動作に基づく空気の動きによって、それらのパターンが作り出されるか”は関心のある群れ飛行の力学的問題の一つになっています。

 一方、襲撃を受けたときの鳥の群れ全体の(パニック状態のように見える)動きは、不規則・多様かつ敏速であり、鳥達の相対的配置は時々刻々と入れ替わり、 外敵が標的を定めることはほとんど不可能でしょう。 結局、群れから脱落した鳥が標的にされる(犠牲になる)でしょう。 (外敵から見れば、これがハンティングの方法です。)  この場合群れの鳥数が多いほど標的になる確率は低減します。 これも、群れ飛行による防衛方法の重要な目的であると考えられます。 外敵に追われて逃げる鳥の群れ 飛行は今後の作品候補の一つです。 ⑧、 もご覧ください。

 上に述べた二つは、群れによる外敵防衛の有力な方法であると考えられます。 

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