③ 高空で採餌するイワツバメの群れ

 イワツバメは夏鳥として渡来し、コロニーで暮らすことが知られています。 野鳥に関する本には、イワツバメについて “比較的高い空を群れで飛行しながら、空中を飛んでいる昆虫類を 口で捕らえて食べる” といった記事がよく出てきます。 空中を飛んでいる虫を捕らえるために群れ飛行する主な目的として、餌場情報の共有や採餌効率の向上などが考えられます。  そのための群れ飛行のパターンは一律でなく、空中の虫の分布状態によって異なるのではないかと考えられます。

 例えば、① 広い空間を疎らに散らばって飛んでいるような虫の分布では、それぞれの鳥が広がって、自由な速さで自由な方向にその速いスピードと切れのよい 方向変換の技を活かして飛ぶパターンが、虫の補足には有効であると思われます。 この場合、外観は、それぞれの鳥がばらばらに周遊または乱舞しているように見えるでしょう。 群れを構成する鳥の数は、コロニーにおける巣の数が数十から数百、ときには五百を越えることから、見当がつくでしょう。

 一方、② 比較的小さい範囲の虫の集団があちこちに存在するような分布では、小規模な群れに分かれて、それぞれの群れの鳥が同じ(平均)方向に同じ(平均)速さで 飛ぶパターンが、相互の接触衝突を避けて、虫の集団をむやみに撹乱することなく、効率よく捕獲できると思われます。 この群れ飛行のパターンは餌場情報の共有にも 都合がよいでしょう。 これまでに入手した数少ない写真や情報では、②の群れ飛行のパターンが多いよう思われますが、この群れ飛行のパターンでも、それぞれの鳥の飛翔には かなり入り乱れた行動が見られます。 コロニーから餌場へ、餌場から他の餌場へは纏まった群れ飛行で移動し、餌場では少し広がって、同じ方向に移動しながらも、かなり自由に 行動しているようにも感じられます。 このような群れ飛行のパターンが、切れのよい方向変換や加速・減速の技を活かして、飛んでいる虫を捕食するのに適しているのだと考え られます。

2013年5月制作、実寸、1号
(鳥達はそれぞれ異なる方法で直・左・右・上・下方向へ前進しようとしている)

 瞬発的な加速・減速や切れのよい方向変換の方法は、第1および第2ステージで詳しく議論してきましたが、全長の2倍もある長い翼開長、全長の1/3を占める長い尾 (全長の1/2を占めるツバメの尾ほどではないが)、それらを動かす強力な筋肉を包む小型のずんぐりした紡錘形の頭-胴は、それらの行動に必要な動作の根幹となっています。

 群れ飛行のパターンや特徴が、集団行動の目的や環境だけではなく、鳥の飛翔能力にも影響されることに注意しておきましょう。

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