晩秋の頃、吹き始めたシベリア下ろしで荒れ狂う海を、ハヤブサやカモメの襲撃を警戒しながら、強風に乗って波間に見え隠れしながら水面すれすれに、津軽海峡を
渡ってくるヒヨドリの群れ飛行は、NHKの斬新な撮影映像もあって、我々の日常生活の中では見ることのできない鳥の集団行動の真髄を示すものとして、多くの人々を感動
させています。
(外敵の攻撃方法をよく心得た)防衛方法・情報の共有・同種の鳥どうしの助け合いと言った集団行動(群れ飛行)の目的が、それぞれの鳥の感知・判断・意思(知恵)
に基づく自律動作によって、いかに実現されているかを知る上で、注目すべき例と言えるでしょう。
力学的観点からも、強い追い風、波を追い越して吹く風の加速流、鳥の慣性を最大限に利用したバウンディング飛行、水面との接触衝突を自然に回避し、推力・揚力
を増進させる表面効果などを存分に利用して、危険区域を 多数の個体が目立つことなく 最短時間で通過するスピードアップの方法や、省力・省エネルギー飛行の方法を示す注目すべき
例と言えるでしょう。 荒天の環境に溶け込んだ迷彩色で、波間に見え隠れしながら 海面すれすれに飛行するヒヨドリの群れは、さぞかし外敵の目をくらますことでしょう。
2013年7月制作、縮尺1/2、1号
晴れた日に海の上空を飛行していたヒヨドリの大群が、ハヤブサの出現を感知・判断して、ハヤブサ特有の急降下攻撃ができないように海面 すれすれ飛行に転じるために、一斉に急降下する場面を撮った写真(WING 野生生活記、和田剛一、小学館、1996)も強く印象に残っています。 これも統制のとれた 集団行動に見えるでしょう。 今後取り上げてみたい作品の一つです。