⑤ 藪の中を移動するエナガの群れ

 それぞれの種類の鳥には、それぞれの鳥の社会があって、それらの集団の規模(群れの鳥数)や集団行動は多様に異なります。 それらは、季節や鳥の成長過程によっても 変化します。(鳥の社会、中村登流、新思索社、2006)

 エナガは小さな(全長が14cm足らず) 尾の長い(全長の1/2)鳥で、小さな群れ(10~30羽)に分かれて、小枝の張った林の中で生活し、その中にある藪の中で 就塒することが知られています。 これは、小さな鳥にとって、外敵から身を護るために極めて有効な方法であると言えるでしょう。

 中村氏の上記著書には、エナガの集団行動について、著者の20年にわたる観察記録が載せられています。 その中には、夕方 帰塒の時刻に なると、まず、周遊地域から塒地域へ高速で移動し、次に、塒地域内で特定の塒まで低速で移動する群れ飛行の詳細な行動過程が述べられています。 就塒という集団行動に おける群れ飛行の過程で、飛行のパターンや方法、(周囲に気を配った)情報伝達の仕方が多様に変わることを示す例として注目されます。 これは、先のイワツバメの採餌 という集団行動における群れ飛行の過程でも見られたことです。

 特定の藪の中の移動は、適当に畳み・広げた翼の羽ばたき、翼(手)や足による張り出した葉や小枝の押し退けや 蹴り、慣性を利用したバウンディング飛行などによる、器用な枝渡り・枝間くぐり といったところでしょうか。 暗い藪の中を、樹枝や仲間と衝突することなく、音を立てずに敏速に移動する飛翔姿は、それを彫刻で表現してみたい思いに駆られます。

2013年9月制作、実寸、1号


 なお、エナガ、メジロ、シジュウガラ など、小型の留鳥では、繁殖期以外は、小群で生活するものが多いことが知られています。 小群の飛行では、空気を介しての 相互作用がほとんどない間隔で飛行し、それぞれの鳥が作り出す下降気流を避けるために、前を行く鳥の直下後方は避け、横か上に外れて飛行している様子が見られます。

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