⑥ 初冬に行方不明の旅に出るスズメの幼鳥の大群

 我々に馴染みの深いスズメの社会では、親鳥の縄張り内に留まって家系を継ぐ連中と、生後間もなく 幼鳥だけで群れ生活をし、初冬に行方不明の旅に出る連中のいることが 知られています。(日本動物大百科4 鳥類Ⅱ、平凡社、1997: 中村登流、鳥の社会、新思索社、2006) 初冬、枯れ葉の散る頃に見られるスズメの大群飛行には、 人間社会でのイメージが重なります。 これも種族の維持・発展のためには必要な行動なのでしょうか。 初冬に飢えと寒さを知り、餌場と暖地を求めて、(死の旅とも言われている) 行方不明の旅に出る生後半年足らずの幼鳥達の心境(脳・神経の作用)を、表情(目付、肉付、色艶 など)、鳴き声(嘴の開き具合 など)、飛翔の態勢や動作から読み取り、表現することは 可能でしょうか。 それは、群れ飛行の力学的表現以上に関心のある課題です。  

 手に入る写真からは、どれも低空を群れで移動していることには変わりありませんが、群れ飛行のパターン、それぞれの鳥の飛行方法、空気を介しての多体間の相互作用は 不規則・不統一で、安定性や制御性に欠け(落ち着きがない)、成り行き任せといった感じがします。 生後間もなく 親から離れて育った幼鳥には、まだ学習機能の成果が徹底していないか、 単に 「赤信号皆で渡れば怖くない」 のようにも思われます。 “初冬に行方不明の旅に出るスズメの幼鳥の大群”と題した写真(彫刻)は、前衛絵画(彫刻)を観ている時のような気分にさせられ ます。

2013年11月制作、実寸、1号

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