ムクドリはスズメやカラスなどとならぶ日本の代表的な里の鳥ですが、非繁殖期の秋冬には群れで生活することが知られています。 昼間 小群に分散して採餌・周遊
していたムクドリは、夕方になると漸次に集合し(集合場所での待ち合わせ、飛行途上での合流 など)、大群になって集団塒へ向かいます。 その数は数百から数千、ときには数万にもなると言われています。
その大群飛行の様子や、集団塒での騒音や糞害がしばしば話題になっています。 黄昏時は視界が悪くなり、大群飛行の様子は、遠くから見るとき、雲塊が風に流されているような、または、巨大な生き物(物体)
が動いているような錯覚を与えるでしょう。 また、近づいてきてそれがムクドリの大群であると分かっても、攻撃の標的を定めることは困難でしょう。 もし 闇雲に大群の中へ突っ込めば、(反撃の意図の有無に
かかわらず)次々と体当たりされて、損傷を受けたり 跳ね飛ばされる危険もあるでしょう。 これも、黄昏(トワイライト)という時間帯を利用した、外敵を防衛する方法の一つであると考えられます。
日本で見られるムクドリの大群飛行では、鳥間の距離は不規則で、それほどには接近しておらず、空気を介しての多体間相互作用はほとんどないと見てよいでしょう。 しかし、 前後・左右に
広がった群れ飛行のパターンは、それぞれの鳥が作り出す下降気流を分散して弱め、また それぞれの鳥が引き連れる前方への流れを集合して強め、多少なりとも省力・省エネルギー飛行に寄与していると
考えられます。
このような状態は、混相流体の力学でよく知られている‘希薄粒子モデル’が当てはまる状態です。 つまり、それぞれの粒子は‘周囲の(局所的に一様な)流れ’の中で単一の粒子
として運動するが、‘周囲の流れ’は多数の粒子の存在(運動)の影響を受け、多数の粒子が存在しないときの‘周囲の流れ’とは異なるとするモデル(解析の手法)です。(日本流体力学会:第2版 流体力学
ハンドブック>混相流、1998、丸善)
それぞれの鳥の飛行の方法は 自由な連続羽ばたき飛行で、鳥達の羽ばたきの周期や位相に相関はなく、 ほぼ同じ速さで 同じ方向に進行していますが、間歇羽ばたきバウンディング飛行している鳥も
かなり多く見られます。 ムクドリに特有な翼の引き上げ方による直線飛行(波状飛行でない)は、それぞれの鳥の速度の平均速度からのずれを小さくし、接触衝突の
回避・緩和に役立つとともに、(防衛要素の一つでもある)高速で飛行するためにも有利であると考えられます。
2014年1月制作、縮尺1/2、1号