サシバは中型のタカで、夏鳥として日本へやって来て 繁殖期を過ごし、冬は東南アジアで越冬・非繁殖期を過ごします。 渡りでは、局所的に発生する上昇気流を利用して 位置 エネルギーを獲得し(その高さは2000mにも達し、地上から肉眼で見るのは難しい)、主として滑空飛行で、必要なときには 羽ばたき飛行で、広い空間にわたって 三々五々に殆ど絶え間なく(群れ飛行のパターン) 渡って行くのが観察されています。 ガンのような編隊飛行をしないのは、中腕・裂翼の鳥で、 高速滑空飛行では、裂翼の効果もあって、誘導抵抗は摩擦抵抗に比べて小さく 問題にならないことや、羽ばたき飛行では 曳航渦(自由渦)の発生しないことなどが、その理由として考えられ ます。
局所的な上昇気流が発生している所では、次々にやって来るサシバが その上昇気流に乗って 旋回しながら高度を上げて行くので、柱のような状態になり、それはサシバの鳥柱(鷹柱) と呼ばれています。 鷹柱は 後続の仲間に上昇気流のある場所を知らせるためにも役立つでしょう。 上昇気流の天辺に差し掛かったサシバは、再び 三々五々に出発し、次の上昇気流が 発生している所まで渡って行きます。 鷹柱もサシバの渡りでの群れ飛行のパターンの一場面と言えるでしょう。
大ざっぱな試算をすれば、滑空飛行での落下速度を1m/sec、前進速度を10m/secとすれば、速度3m/secの上昇気流で2000mまで上昇するには1000秒(17分)かかり、この位置から 出発すれば2000秒(33分)で20㎞進むことができるでしょう。 速度3m/secの追い風に乗れば、26㎞進むことも可能でしょう。
なお、滑空飛行での落下速度の低減、旋回での操舵、安定性や制御性の力学については、すでに、ステージ1や2で詳しく議論しました。 (トビの帆翔、 鳥の操舵方法、垂直尾翼なしで方向を自由に変える技、横揺れを安定化しきりもみ墜落を 防ぐ機構、など参照。)
2014年12月制作、1/4縮尺、1号
ツバメの渡りでの群れ飛行のパターンも、サシバのそれ(三々五々に殆ど絶え間なく)に似ているのではないかと思われます。 相違は、海面すれすれを 波間に見え隠れしながら高速で移動して外敵の襲撃を防衛していること、表面効果・追い風・波を追い越して吹く風の加速流・慣性などを利用して省力・省エネルギー飛行をして いること、などでしょう。 ぜひ確認してみたいと思っています。