冬に、京都(下鴨神社近くにある自宅)の鴨川で見られるユリカモメは、カムチャツカ半島の繁殖地から日本の越冬地へやって来る渡鳥です。 鴨川で見られるユリカモメは 集団塒のある琵琶湖と餌場の鴨川の間(約10㎞)を一日一往復しています。 黄昏時にはユリカモメの鳥柱が見られることから、(多分、京大病院や府立医大病院の暖房施設の付近で発生している とみられる)上昇気流を利用して山越えに十分な位置エネルギーを獲得し、東山の低い峰部分(高さ500m程度)を超えて帰って行くと考えられます。 鳥柱は、鴨川に広く分散している仲間への 就塒の合図としても役立っているのではないでしょうか。
ユリカモメは 中型で長腕の鳥ですが、越冬地での群れ飛行のパターンは、V字型編隊飛行を見ることは少なく、多様に変わる 雑然とした集団飛行(群れ飛行のパターン)(高速で飛行し、相対的配置は時々刻々と変わり、前後に長く伸びたり、左右に広がったり、 上下にうねり動いたりする)が多く見られます。 多様な羽ばたき飛行ができて、曳航渦の発生は無いか/弱い可能性が考えられます。 あるいは、小さな翼面荷重からみて、誘導抵抗が問題に ならないほど十分な推力を出せる可能性もあるでしょう。 また、マガモやマガンのように、生活行動(採餌・就塒など)での飛行方法と渡りでの飛行方法を使い分けている可能性もあるで しょう。 今後の調査・観察が望まれるところです。 この一見雑然とした群れ飛行のパターンにも、その優れた飛行能力を存分に活用して、飛翔環境を巧く利用し、外敵に襲撃の隙を与えず、 仲間の動きによる不利な影響は避け、有利な影響は利用するといった したたかな飛行であることが見て取れます。
2015年4月制作、1/4縮尺、1号
-鳥の彫刻20周年の所感-
定年退職後、飛翔姿の鳥の彫刻と鳥の飛翔の力学的説明を初めて、早や20年が過ぎました。 現役時代のような難しい式は使わずに、子供達や一般の人々にも分かるようなものを想定・企画して
きました。 単独の鳥の飛翔姿(第1・第2ステージ)から 群れの鳥の飛翔姿(第3ステージ)へと進展しています。 第1・第2ステージでは、多様な鳥の(単独の)飛翔姿を表現する上で、
それぞれの鳥の飛翔のための機能構造や対応する飛翔力学を理解することの重要性を認識することができました。 第3ステージでは、多様な鳥の群れの飛翔姿を表現する上で、それぞれの鳥の社会
における集団性行動や対応する脳・神経の働きを理解することの重要性を認識しつつあります。 これは 鳥の飛翔姿(飛翔の力学)を これまでとは異なる観点から考察する新しい試みでもあります。
納得のゆくレベルに達するには まだ数年はかかるでしょう。 その後の目標(夢)は、①これまでの成果を整理し・体系化すること、②デジタルカービング(第4ステージ)に進むことですが、
体力・思考力の維持や資金の調達に大きな不安があります。 与えられた一度の人生を有意義に終えるために、そして、戦争で失った青春時代を補填するために、体力・気力の続く限り 楽しく
頑張る所存です。