キジバトは京都の私の家の庭先に毎日やって来て、撒いた残飯を食べ、終わると飛び去って 行きます。 その離陸姿はマガモのそれと似ていますが、広げた尾を下げたり、大きく羽ばたいて 翼を打ち合わせる様子は見られません。 翼面荷重が比較的小さく、離陸するのに十分な空間があり、 (人に慣れた都会の鳥にとって)急発進する必要がない安全な場所からの離陸には、そのような動作は 必要でないのでしょうか。
制作:1998年7月、実寸(全長=33cm、翼開長=55cm)
緊急離陸姿をキジバトに例をとって考えてみましょう。 緊急離陸は地上から安全な高度まで 急上昇することで、体重を上回る大きな垂直上向きの力が要求されます。 鳥は、まず、上にあげた翼を (話題2の図5で、臨界大胸筋力に等しい抗力に対応する迎角で) 勢いよく打ち下ろして、下方へ向かう気流を作り出すでしょう。 さらに、その翼を真下まで下げて打ち 合わせ、両翼と広げて下に曲げた尾で囲まれた空気を下方へ勢いよく押し出すでしょう。 真上まで 引き上げて打ち合わせた翼を勢いよく開くときにも、下方へ引き込まれる気流の作り出されることが‘叩き と開きの機構’として知られています。 これらの打ち下ろしと打ち合わせによって大気に与えられる 運動量と、足で地面を蹴る力の反作用として大きな上向きの力が作り出されるでしょう。 (水鳥では、最初の 打ち合わせは、翼で水面を叩く力(水に与える運動量の反力)に替えられます。) 翼の打ち下ろし・打ち 合わせや足蹴りで水平方向の推力が生じると、水平方向の速度成分が生じ、それは慣性の法則 (力学の第1法則)によって維持されるでしょう。 安全な高度に達すると、翼まわりに循環を伴う(省力・ 省エネルギーの)羽ばたき飛行に切り替えるでしょう。 助走なしに飛び立つ鳥は、切り替えの早い遅い はあれ、このような離陸方法をとっているように思われます。 緊急離陸の方法は、力の負担や エネルギーの消費が大きく、持続することは困難でしょう。 緊急離陸に関連した話題が話題9で取り上げられています。
制作:2002年6月、実寸
2002年5月末、高村光雲(1852~1934)の生誕150年を記念して、茨城県近代美術館で開催された“高村
光雲とその時代展”を見に行きました。 つくば市の家から近代美術館へは常磐自動車道・北関東自動車道
経由で1時間足らずで行くことができます。 明治から大正にかけて制作された、「江戸仏師の伝統と西洋
美術の写実性を融合した近代的作風で、新しい木彫の流れを作り出した」、動物彫刻、仏教彫刻、人物彫刻
などを鑑賞しました。 このような多岐・多数の大作が1人の日本人によって制作されたこと(その人間としての
スケールの大きさ、視野の広さ)、木彫の美しさや表現の豊かさ〔例えば、野猿がワシと闘って逃げられた後の
姿と言われている“老猿”(重要文化財)の顔の表情や昂奮冷め遣らぬ毛並の表現など〕 に改めて感動しました。
動物彫刻には、矮鶏(明治22年)、松樹鷹(大正13年)、鳩(大正15年)、楓樹に雉子図(欄間)(制作年不詳)
など、鳥の彫刻も含まれていますが、それぞれの表現、デザイン、用途には、今の私達に誇りと自信、そして
反省を与えてくれます。
高村光雲やその時代の彫刻に関するデータは“高村光雲とその時代展”(編集:三重県立美術館、茨城
県近代美術館、千葉市美術館、徳島県立近代美術館、美術館連絡協議会;制作:大塚巧藝社;発行:三重
県立美術館、茨城県近代美術館、千葉市美術館、徳島県立近代美術館、美術館連絡協議会、読売新聞社;
c:2002)に詳しく記載されています。