ツバメは短腕で、長距離を高速で飛行するために有利な、先端の尖った三日月型の翼をもつ
小型の鳥です。 また、速い羽ばたきと滑空を交えた飛翔、二又に分かれた尾による急速な旋回
などで、方向変換の激しい飛翔をする鳥として知られています。
話題6で説明されているように、飛翔中の鳥が進行方向を変えるためには、ある方向の運動量
をもつ気流を作り出し、その反作用力が重心に関して旋回方向のモーメントを与えるようにしなければ
なりません。 また、切れのよい旋回をするためには、モーメント/慣性能率を大きくしなければなりません。
滑空状態で旋回方向のモーメントを作り出すためには、水平に広げた翼を旋回方向に傾ければよい
のですが、翼の圧力中心が重心の近くにあるため、応答が悪く、切れもよくありません。 また、羽ばたき
状態で旋回方向のモーメントを作り出すためには、左右の翼の羽ばたきの振幅や迎角を調節して、
左右の翼に作用する推力や抗力に差をつければよいのですが、高速飛行では制御性や安定性に
問題があります。 これに対して、尾を使って進行方向に直角な運動量成分をもつ気流を作り出せば、
それによって生じる力の作用点は重心から遠くにあるので、操舵の切れは非常によくなります。
水平飛行しているツバメが尾を少し上に曲げると、上向きの運動量成分をもつ気流が発生し、
尾には下向きの力が作用し、垂直面内で上向きに旋回できるでしょう。 また、尾を少し上に曲げ、
右(左)回りにひねると、尾には左(右)下向きの力が作用し、右(左)上へ旋回することができるでしょう。
二又に分かれた尾を広げると翼の形になり、このような形の尾の上げ下げや左右へのひねりによって
尾には大きな力が作用し、ツバメの体重(従って慣性能率)が小さいことも手伝って、急速な
方向転換が可能になると考えられます。
制作:2000年5月、実寸(全長=17cm、翼開長=32cm)
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