ウミスズメは空中および水中の両方で羽ばたき飛翔で進行します。 ペンギンほどではない にしても、ずんぐりした紡錘形の胴と、短くて細い翼が特徴です。 翼に十分な構造強度を与える ため次列風切羽の枚数は多くなっています。 水中では重力と同程度の浮力が存在するため、 進行方向に関してほぼ対称にした翼を迎角ゼロで垂直に羽ばたき、翼に作用する力の垂直成分を 1周期にわたって相殺し、水平成分を推力にします。 翼の迎角を負(正)にして進行方向に関して 垂直に羽ばたくと、翼に作用する力の垂直成分は1周期にわたって相殺されず、負(正)の揚力を 与えます。 ウミスズメはこれらの推力や負(正)の揚力を潜水や浮上に利用していると考えられます。 比較的大きな負の迎角で強く打ち下ろし、比較的小さな負の迎角で弱く引き上げるならば、大・小 胸筋の力に見合った、正・負揚力の相殺と、大きな推力が得られるでしょう。 このような翼の迎角の 切り替えは、少し上に傾けた翼を上下の動かすだけで、自然に作り出されるでしょう。 水の密度は 空気の密度に比べて1000倍近く大きいので、その分、翼の迎角や羽ばたき速度は小さくて済む でしょう。 加速運動では、鳥が押しのける水の仮想慣性力を考慮しなければなりません。 後方に ついた水掻きのある足は、推進にはほとんど用いられず、操舵に用いられることが知られています。 密度の高い水中では、負担のかかる初列風切は小さくすぼめて後方へやり、潜水や推進には 次列風切が役をつとめますが、密度の低い空中では、大きく広げた初列風切が取って代わります。 水面すれすれに飛翔するのは表面効果を知っているのでしょうか。
制作:2002年8月、実寸