⑰ コチョウゲンボウの離陸

 木の枝や崖の岩棚から飛び立つ鳥は、空母からカタパルトで飛び立つ艦載機のように、 風に向かって、足で枝や岩棚を強く蹴り、少しの落差で重力の位置エネルギーを運動エネルギー に変え、ときには翼の打ち下ろしによる推力も加えて、 最初の滑空速度(臨界値を越える速度)を 得ています。 アホウドリのような海鳥が波の頂きから風上に向かって飛び立つときにも、このような 方法が用いられると思われます。

制作:2001年5月、実寸(全長=29cm、翼開長=64cm)




 下の作品は、スタートから半年後に最初に制作した、拙い部分の目立つ作品ですが、私に とっては思い出に残る作品です。 コチョウゲンボウはハヤブサの仲間で、小柄ながらファイト があります。 また、その色には若者気取りの老人といった雰囲気があります。 さらに、 ちょうどこのとき、幼い頃から共に生活してきた庭の老松が枯れ、定年直後のこともあって、 寂しい時期でした。 コチョウゲンボウが飛び立つ木の枝はその枯れた松の枝です。 この作品 にはその頃の自分の姿と心情が残されているよに思われます。 作品の鑑賞や評価において、 制作者の環境や心情を知ることの大切さとその難しさが理解できます。

制作:1995年9月、実寸

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