かって、茨城県立国民宿舎「鵜の岬」のロビーに置かれた観光用ビデオの映像に出てきた、朝焼けに映える 鵜の岬の凪いだ海上を、きれいなV字型編隊で飛んで来る ウミウの群れが 強く印象に残っています。 ぜひ 彫刻で表現してみたいと思っています。
一般に、渡りでの長距離行動・省力省エネルギー型の飛行と、繁殖地や越冬地での単距離行動・生活機能型の飛行では、群れ飛行のパターンや飛行方法に 多かれ少なかれ 違いがある と考えられます。 特に、移動距離の長い漂鳥や、餌場と就塒場間の距離が長い場合、それらが どのように使い分けされているかにも多大の関心があります。
ウミウの場合、「ねぐらと採餌場を往復する時、編隊を組んで飛ぶのが見られる。」(高野伸二 編、山渓カラー名鑑 日本の野鳥、山と渓谷社、1994、p.32)、「毎朝日の出前のまだ薄暗い 頃から、ウミウは三三五五、小さな群れを作って三浦半島の沿岸に採餌に飛び立ちます。 そして海の中に潜り、魚を嘴で挟んで捕えてから海面に浮き上がり、文字通り鵜呑みにします。」、 「その漁場は各群れで大体決まっています。 そしてなぜかこの猟場へ行くのに、ウミウたちは絶対に陸地の上空を飛びません。」、「これほど律儀に陸上飛翔を避けるウミウですが、春秋の渡り の際は、ガンやツルのように逆V字型の編隊を組み、高い高い上空を(陸地であってもかまわず)一途に目的地へ向かって飛びます。」(柴田敏隆、鳥のおもしろ行動学、ナツメ社、2006、p.134)、 といった観察記事が注目されます。 なお、茨城県の鵜ノ岬で春・秋のある期間に見られるウミウについては、近くに短期間滞在する中継地としての塒(崖地)と餌場(漁場)が在ると考えられます。 繁殖地と越冬地間の移動の仕方 が集団によって異なることにも注意すべきではないでしょうか。
たぶん、採餌や就塒といった、単距離行動-生活機能型の編隊飛行では、スピードアップするために、(長距離行動-省力・省エネルギー型の編隊飛行に比べて)羽ばたきの振幅が大きい のではないかと思われます。 この場合、曳航渦の横方向への蛇行や摩擦抵抗で増加した抗力に対抗する推力の作り出されることが要求されるでしょう。 鳥の編隊飛行は、鳥の感知・判断・思考 (脳・神経の作用)に基づく自律動作を示す典型的な例の一つではないでしょうか。 V字型編隊羽ばたき飛行の力学については、前の ⑪ 斜列飛行で渡るマガモ の群れをご覧ください。
2015年2月制作、1/4縮尺、1号