嘴にくわえた獲物のために、重心はアジサシの重心から外れ、より大きな重力が作用します。 また、獲物をくわえたアジサシは、水面から直接に飛び立ちます。 このとき、力学的に合理的な姿形 (飛び立つために必要な力の発生方法や、力およびモーメントのバランスのとり方など)に関心が もたれます。
制作:2006年11月、実寸(全長=31cm、翼開長=77cm)
スナップ写真やストロボ写真、ビデオ映像などから、アジサシやカワセミなど、嘴で魚を捕獲する 鳥では、捕獲後 緊急離水の方法に準じた方法で飛び立つ様子が見られます。 緊急離水の方法とは、 下方へ引き込まれる流れを作り出す真上での叩きと開き、強力な打ち下ろし、下に曲げた尾と両翼を 用いて空気を下方へ勢いよく押し出す真下での打ち合わせ、翼面を垂直にした引き上げを意味しています。 最初の打ち合わせは、翼で水面を叩く(水を後下方へ押しやる)ことに替えられます。 鳥に作用する 揚力の作用点を鳥と魚の2体系の重心の上に置くため、翼は真上または後上から前方下へ打ち下ろされ ます。 2体系の重心と鳥の重心とのずれを小さくするため、足を後下へ伸ばしたり、魚をくわえた頭を 下後ろへ向けている姿も見かけます。 これは安定性の見地からも合理的です。 水掻きのある足で水を 下後方へ勢いよく蹴ることによる反力や水中突入後にできる水面の盛り上がり運動も離水の助けになるで しょう。 翼を強く打ち下ろすとき下方へ向かって飛散する水滴も揚力の増強に役立つと考えられます。 長腕尖翼、燕尾、短足といったアジサシの特徴から、緊急離水の方法は、揚力とともに大きな推力を作り 出し、水平羽ばたき飛行への移行を早めるでしょう。