⑳ 強風の中で乱舞するトビの群れ

 強い西風が吹く冬の昼下がり、京都の出町柳(賀茂川と高野川の合流地点)の辺で、トビの群れの乱舞が見られます。 多分、川の両岸の堤防に沿って立ち並ぶ大木や ビルの谷間で局所的に発生していると見られる 巻き返し気流や淀み、巻き上がり気流を乗り継いで 帆翔を繰り返していると考えられますが、大型(翼開長 約1.6m)の鳥の 高速滑空、急降下、急旋回、急上昇などを数10mからときには数mの至近距離で見るのは迫力があって壮観です。

   家族で遊技を楽しんでいるのか、集団で飛行訓練をしているのか、集団飛翔の目的はよく分りませんが、リフト(ここでは巻き上がり気流)が設備されたゲレンデでスキーを 楽しんでいる人間の大人や子供達が連想されます。 寒さやバスの到着も忘れて見入っている私自身も トビの乱舞を見て 楽しんでいるのか、気流の状態や飛行の方法を 考えているのか分らない状態です。 これを彫刻で表現することに意欲を感じます。

 トビの群れの乱舞が、秋冬の非繁殖期の夕暮れに集団塒の上空で見られることはよく知られています。 昼間 分散して採餌・周遊していたグループは、夕方、三々五々に集団 塒へ向い、塒の近くで 他のグループの帰りを待合せ、皆が揃うと一斉に飛立ち、塒の上空で乱舞(仲間の確認・就寝の挨拶 ?)をした後、塒入りすると言われています (トビの社会における就塒の群れ飛行パターン!)[山渓カラー名鑑 日本の野鳥 p.137 (山と渓谷社、1985)、図鑑 日本のワシタカ類 p.47 (文一総合出版、1995)、日本動物大百科 3鳥類 I p.148 (平凡社、1996)]。
 一方、ここで見られたように、鳥の集団性行動(群れ飛翔)が、渡り、就塒、採餌 などに限らず、昼間の遊びや育成訓練 ? などにも見られることに注目されます。 この場合、 群れ飛翔のパターンや飛翔の方法は、遊びや訓練の内容によって、多様・複雑に異なるでしょう。 これから、鳥の脳・神経の多様・複雑な働きを垣間見ることもできるでしょう。

2016年1月制作、1/5縮尺、1号

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